商業登記担当の向井です!
この記事も三回目を迎え、皆様にどうすればより良い記事をご提供できるのか、模索中ですが、どうぞよろしくお願いします!
今回は、皆様がつい忘れがちになってしまう「株式会社の役員の任期」についてお話をしたいと思います。
○取締役・監査役の任期
株式会社の取締役・監査役には、任期が定められています。
定款に特段の定めがない株式会社においては、以下のとおりとなります。
① 取締役
→取締役は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち、最終のものに関する定時株主総会終結の時まで(なお、定款又は株主総会の決議によって、これを短縮することもできます。)とする、と会社法に定められています。(会社法332条1項)
②監査役
→監査役は、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会終結の時までとする、という規定があります。
なお、監査役は、定款又は株主総会の決議による任期の短縮はできません。(会社法336条1項)
公開会社でない株式会社の取締役及び監査役の任期は、定款で定めることにより、最長10年まで伸張することができます。(会社法332条2項、会社法336条2項)
※定められた任期を過ぎてしまうと、選任懈怠と呼ばれる、取締役・監査役の任期が更新されていない状態となります。
○取締役・監査役の任期の計算方法
取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち、最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで、です。(会社法332条1項)
例題として、12月末決算で定款に取締役の任期を2年と定めている会社が令和2年2月28日の定時株主総会で取締役山田太郎を専任した場合、いつまでになるのでしょうか?
答えは、令和3年12月末の事業年度に関する定時株主総会の集結の時までになります。
※なお、定款に増員の規定や、補欠選任の規定がある場合は、その規定に従います。
詳しくは下記参照。
取締役山田太郎は、令和2年2月28日に選任されているので、任期は令和4年2月28日までの二年間という計算ではなく、令和4年の定時株主総会を2月15日に行えば、その2月15日の定時株主総会が終わった時点で任期が終了します。
○任期途中に任期が伸長または短縮された場合
株主総会の決議により、取締役・監査役の任期に関する定款の内容を変更した場合、任期途中である取締役・監査役の任期はどうなるのでしょうか?
例えば、取締役の任期を5年と定めている会社が、任期を10年と変更した場合、(選任後3年経過した)取締役の任期は、変更前は残り2年でしたが定款変更により任期が残り7年となり、逆に任期を短縮して2年に変更した場合の取締役の任期(選任後3年経過)は、定款変更時に任期満了し、退任することになります。
・定款附則による任期調整について
取締役の任期を5年と定めている会社が任期を2年に変更した場合(選任後3年経過)は、上記の通り、定款変更と同時に取締役は退任することになりますが、「令和○年○月○日の定時株主総会で選任した取締役の任期は令和○年○月○日までの事業年度に関する定時株主総会の終結の時までとする」と定款に定めることにより、現任の取締役の任期だけを5年とすることも、可能です。
なお、上記の定款の定めは将来自動的に消えるわけではないので、当該取締役が任期を満了した後に上記の定款の定めが自動的に消えるように定めておくと、後日株主総会で定款の文言を削除する手間を省くことができます。
○決算期(事業年度)の変更と任期
お客様からよく頂くお問合せで、
「3月末決算から12月末決算に変更した場合、取締役の任期はどうなるのでしょうか?」
といったご質問があります。
この場合ですと、次のようになります。
・事業年度が「1月1日~12月31日まで」で、任期が「2年」の会社の場合
例えば上記の会社ですと、令和3年6月に選任された取締役の任期は、令和3年6月から2年以内に終了する事業年度のうち最終のもの、は令和4年の12月末までとなりますので、その令和4年12月末の事業年度に関する定時株主総会(一般的には、12月末から3ヶ月以内の令和5年の2月又は3月)までとなります。
○補欠規程・増員規程
任期満了前に退任した取締役、監査役の補欠として選任された者の任期を前任者の任期の満了すべき時までとする旨の定めが定款にある会社は、前任者が任期の途中で退任した場合、前任者の補欠である旨を明らかにして選任することにより、前任者の任期を引き継ぐことができます。
同様に、増員により選任された取締役の任期は他の在任取締役の任期の残存期間と同一とする旨の定めが定款にある会社は増員取締役である旨を明らかにして選任することにより在任取締役の任期と併せることができます。
この増員規程に関しては、監査役に対して定めることはできません。
○有限会社・合同会社の役員の任期
株式会社と同じ営利法人である有限会社・合同会社は会社法上、任期の規定はありません。
有限会社や合同会社は、取締役・監査役・代表社員の再任やそれに伴う登記手続も不要です。
ただし、有限会社の場合は「取締役・監査役」、合同会社の場合は「代表社員」の住所に変更がある場合は、住所変更登記の手続きが必要となります。
よって、株式会社よりも継続的な費用が抑えられるといったメリットがここでも効果を発揮します。
※以前のコラムで詳しく解説していますのでご参照ください
【コラム】株式会社と合同会社の違いについて https://l-escort.jp/column/699/
○任期の再確認
取締役が自分のみ(1名のみ)、株主を含めて家族間での経営などの理由で取締役・監査役の任期を10年にしている会社は、役員改選をする機会があまりなく、つい任期を忘れがちになってしまいます。
登記申請をせず登記懈怠になったり、役員改選を忘れて選任懈怠になったりすると、過料に処せられる又は休眠会社に該当して登記官の職権による解散登記がなされることがありますので、そのようなことが起こらないように一度、役員の任期を確認してみてはいかがでしょうか。
任期が過ぎてしまっている、または任期の計算方法がわからないといった場合は、一度当事務所までお気軽にご相談ください!