【コラム/相続】日付が曖昧だった自筆証書遺言で相続登記を行ったケース

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はじめまして。

相続のお手続きを担当しております田中と申します。

以前より商業登記に関するコラムを掲載して参りましたが、今月より相続のお手続きに関するコラムも掲載することになりました!

商業登記担当の向井と隔月ごとにお送りしていく予定です。

当事務所では、年に100件以上の相続手続きをお手伝いしておりますが、様々な案件を担当させていただく中で、「生前にもっと対策をされていれば、相続人様の負担を減らすことができたのに…」と思うことも多々あり、改めて生前対策の大切さを実感することも多いです。

このコラムでは、私達が実際に経験した事例を中心にご紹介していく予定ですので、生前対策をご検討されている方、実際に相続のお手続きで困っていらっしゃる方のご検討材料の一つとなれば幸甚です。

<状況>

大阪府在住のA様が、「母が亡くなり、残された自筆の遺言書を発見しました。幾つかの司法書士事務所様にもご相談させていただいたのですが、遺言書に記載の日付が曖昧だったため、この遺言書では登記手続きは難しい、と断られてしまいました…」とお困りの様子でご相談にいらっしゃいました。

詳しくお話を伺ったところ、お母様がお亡くなりになった後に戸籍を調べ前夫との間に子供がいることがわかったようです。全く面識のない前夫との子と、話し合いをすることなく手続きを進めたいとのご要望があることがわかりました。

遺言書を確認したところ、確かに日付は特定性に欠けていましたが、その他はしっかりと書かれており、日付以外の要件は満たしている状況でした。

自筆証書遺言について、民法第968条では下記のように記載されております。

1.自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

2.前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全文又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。

3.自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

民法/e-Gov法令検索 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

上記の要件を満たさない遺言は、原則としては効果が無いものとみなされてしまいます。

“「〇年〇月吉日」という遺言は無効”というお話は、テレビ等で耳にされた方も多いのではないでしょうか。

しかし、一方で上記の要件を満たしていない遺言でも有効とする判例もございます。

最高裁昭和52年11月21日の判決では、自筆証書遺言の誤記に関する一般論として、「自筆遺言証書に記載された日付が真実の作成日付と相違していても、その誤記であること及び真実の作成の日が遺言証書の記載その他から容易に判明する場合には、右日付の誤りは遺言を無効ならしめるものではない。」とされています。

難しい言葉が並んでいますが、要は「日付に少し誤字があったとしても、遺言書を記載して日付が想定できるのであれば有効としましょう」ということです。

実際、東京地裁平成19年3月16日の判決では、自筆証書遺言の日付に「甘」日と記載されていることが問題となりましたが、これは「廿(二十)日の誤記であると解されるから、これをもって日付記載を欠くことにはならない」とされています。

<当事務所からのご提案・お手伝い>

上記のような判例があることから、諦めずに一度この遺言でチャレンジしてみましょうというお話をさせていただき、民法や判例に基づき今回の遺言は有効として手続きを進めたい旨を法務局と打合せを行いました。

<結果>

法務局との打ち合わせの結果、「有効な遺言書である」との回答を得ることができ、無事に登記手続きを行うことができました。
A様にご報告させていただいたところ、「無理かも知れない思っていたので、とても嬉しいです。これで安心して眠れます。本当にありがとうございました。」と非常に喜んでいただくことができました。

このたびのケースでは無事に登記手続きを進めることができましたが、自筆証書遺言には日付以外にも幾つかの要件があり、その要件を満たさないと、せっかく作成しても無効な遺言書となってしまうことがございます。

当事務所では、有効かどうか定かではない遺言書であっても、故人の託された想いを実現するため、遺言書の有効性を調べ、可能な限り手続きができるよう努めております。

また、今回登場した「自筆証書遺言」以外にも、「公正証書遺言」という形式があります。
残される財産の内訳や相続人様の状況によっては、「公正証書遺言」でなければ思うような相続・承継を実現できない場合があります。
当事務所では、”ご本人様が叶えたい思いを実現できる遺言書”をモットーに、経験豊富な司法書士が、最適な遺言書の作成をご支援させていただきます。

遺言書のことでお悩みがおありでしたら、ぜひ一度ご相談ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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