【コラム/商業登記】本店移転(管轄内・管轄外)

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商業登記担当の向井です!

今月の前半は、夏を思わせるような日が続いていましたが、後半に入ってから、一気に秋が始まってしまったように感じます。
衣替えのタイミングが、何とも悩ましいですね…!
みなさまも、季節の変わり目くれぐれもご自愛ください。

今回は、【株式会社の本店移転登記】をテーマに、本店を“管轄内で移転をする場合”と“管轄外で移転をする場合”の手続きについてご説明いたします。

〇本店移転登記の手続き

会社の本店の住所は「登記事項」となりますので、会社が本店の変更(移転)をした場合は、対応する登記を行わなければなりません。

本店の移転日(=効力発生日)から2週間以内にその登記をしなかった場合は、「登記懈怠(とうきけたい)」となり、過料に処せられる可能性がありますので要注意です。

本店移転の事前準備

例えば、株式会社で本店を「大阪市○○区○○一丁目1番1号」に置く会社が「大阪府堺市△△区一丁1番1号」に本店を移転する場合は、株主総会の決議により、「当会社は、本店を大阪市に置く」から「当会社は、本店を大阪府堺市に置く」と定款を変更し、具体的な本店の所在場所と移転日は、取締役会の決議(取締役会非設置会社は取締役の決定)が必要となります。

管轄内本店移転と管轄外本店移転について

また、本店を“管轄内に移転する場合”と“管轄外に移転する場合”とでは、手続きの内容や難易度、さらに費用も変わってきます。

「管轄内本店移転」とは、“移転する前の本店”と“移転した後の本店”を管轄する法務局が同一である本店移転のことです。

(例)
・大阪市内で本店を移転する場合 → 大阪法務局
・京都府内で本店を移転する場合 → 京都地方法務局
・滋賀県内で本店を移転する場合 → 大津地方法務局

対して「管轄外本店移転」とは、“移転する前の本店を管轄する法務局”と“移転した後の本店を管轄する法務局”が異なる場合の本店移転のことです。

(例)
・大阪市内から大阪府堺市へ本店を移転する場合 → 大阪法務局から大阪法務局堺支局へ
・京都府内から兵庫県内へ本店を移転する場合  → 京都地方法務局から神戸地方法務局へ

本店のビル名が変更になった場合

会社が入居しているビルのオーナーが変わったことにより、新しいオーナーがビル名を変更する場合があります。

この場合、本店の住所をビル名まで登記をしている会社は、実際には本店を移転していない場合でも本店の変更登記をすることになります。

ビル名が変わったことによる本店の変更登記を法務局に申請する場合は、添付書類に会社の都合で変更したものではないことが分かるよう、明確に記載しなければなりません。
なお、法務局によって取り扱いが変わる可能性がありますので、ご注意ください。
(※当事務所では、事前に法務局と打ち合わせをしながら進めております。)

〇本店移転の決定の決議機関を株主総会だけにすることは可能か

前記の「本店移転の事前準備」でも述べているように、本店を移転した場合は、まず株主総会の決議により定款変更をし(例:「本店を大阪市に置く」から「本店を大阪府堺市に置く」)、さらに具体的な本店の所在場所と移転日の決定を取締役会の決議(取締役会非設置会社は取締役の決定)で行う必要があります。

2回の決議を経なければならないと考えると、少し面倒だと感じられた方もいらっしゃるかも知れません。
実は、この「具体的な本店の住所と移転日の決定」を、株主総会の決議で一緒に行うことが可能な場合があります。

取締役会非設置会社

取締役会非設置会社における株主総会は、ほとんどの事項を決議することが可能ですので、具体的な本店の住所や移転日を株主総会で決議することができます。

(決議例)
第1号議案:定款変更(例:「本店を大阪市に置く」から「本店を大阪府堺市に置く」への変更)
第2号議案:具体的な本店の住所と移転日の決定

取締役会設置会社

取締役会設置会社における株主総会は、会社法に規定する事項や定款に定めた事項に限り、決議をすることが可能です。(会社法第295条第2項)

取締役会の決議事項である具体的な本店の住所と移転日は、原則、株主総会で決議をすることはできませんが、定款に決議することができる旨を定めることにより、株主総会で具体的な本店の住所と移転日の決定を決議することができるようになります。

〇「管轄内で本店移転をするとき」と「管轄外で本店移転をするとき」の登録免許税の違い

本店移転登記の場合は、申請する法務局ごとに登録免許税が3万円かかります。

株式会社が管轄内本店移転の登記申請をする場合は、申請する法務局が1つですので、登録免許税は3万円となります。

管轄外本店移転の登記申請をする場合は、旧管轄の法務局と、新管轄の法務局の2つに申請をする必要がある為、法務局に納める金額が6万円となります。

〇登記申請時に提出する必要書類

本店移転の登記申請の際、一般的には下記の書類を準備いたします。

管轄内本店移転

・取締役会議事録
(取締役会非設置会社の場合は、「取締役の決定書」)
・委任状(登記申請用)

〈※定款変更がある場合は、株主総会議事録や、株主リストを添付する場合もあります。〉

管轄外本店移転

・株主総会議事録
・取締役会議事録
(取締役会非設置会社の場合は、「取締役の決定書」)
・定款
・株主リスト
・委任状(登記申請用)
・印鑑(改印)届書
・印鑑カード交付申請書

※下記の書類は、一般的な必要書類となります。管轄内・管轄外で移転する場合、取締役会の有無、 定款に記載されている内容により、準備する必要書類が変わります。

今回お伝えした会社の本店移転については、状況によって必要な手続きや資料が異なるため、ご依頼いただく際に様々なご質問を頂きます。
今後、実際の事例を基にした「登記に関するQ&A」を、記事として公開していく予定です。
少しでもお役に立てればと思い準備を進めておりますので、公開されましたら、ぜひご覧いただければ幸いです。

本店移転をご検討されている方は、お気軽に当事務所までご相談ください!
経験豊富な専門スタッフが対応させていただきます。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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