商業登記担当の向井です!
今年はまさに、酷暑という言葉に相応しい暑さが続いていますね。
クーラーの効いた部屋で涼みながら、アイスが食べたいです。
まだまだ暑い日が続きますので、皆さんも熱中症にはお気をつけください!
今回は、”みなし株主総会”についてご説明いたします。
株主総会の開催
定時株主総会は、前事業年度の終了後、一定の時期に招集しなければならず(会社法296条1項)、臨時株主総会は必要がある場合、いつでも招集することができます(会社法296条2項)。
なお、株主総会は原則、取締役が招集し、株主総会を招集するには、株主に対してその通知をしなければなりません(会社法296条3項、299条1項)。
この招集手続きは、書面投票制度・電子投票制度を採用しない限り、株主全員の同意がある時は省略することが可能です(会社法300条)。
株主総会の書面決議・みなし決議
議決権を行使することができる株主全員が株主総会の目的である事項について書面又は電磁的記録により同意の意思表示をした時は、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなされます(会社法319条1項)。
これは、”書面決議”あるいは”みなし決議”と呼ばれています。
この方法は株主が1名もしくは少数の会社においてはよく利用されてきました。
最近では、人の集まりを避けるため、書面決議(みなし決議)で株主総会を成立させる会社も多くみられます。
株主総会の決議があったものとみなすことができる
株主(議決権を有する株主に限る)の全員が株主総会で決議する事項について賛成または同意しているケースにおいても、時間を合わせて実際に株主総会を開催しなければならないとなると、会社にとっても株主にとっても負担ばかりでメリットがありません。
会社法319条1項によって、株主総会の開催及び決議を省略できるとされています。
この方法による株主総会の決議をみなし株主総会の決議あるいは株主総会のみなし決議と言われています。
株主総会のみなし決議の意思表示は書面または電磁的記録による意思表示が必要なので、口頭での同意は認められておりません。
(株主総会の決議の省略)
会社法/ e-Gov法令検索 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086
会社法第319条第1項
取締役または株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る)の全員が書面または電磁的記録により同意の意思表示をした時は、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす。
株主総会の目的である事項の提案者
株主総会の目的である事項(取締役の選任など)を提案できる人は、取締役又は株主とされています。(会社法319条1項)
みなし株主総会の決議の成立日
みなし株主総会の決議の成立日は、議決権のある株主全員の同意の意思表示が会社に到達した日となります。
例えば、4月5日に株主総会の決議があったとみなしたい場合でも、「4月5日までに同意書を会社まで返送をお願い致します。」と3月末頃に株主に提案書と同意書を送れば、4月4日までに全員の同意書が揃うかもしれません。
その場合、4月4日に全員の同意書が揃っているので、株主総会の決議があったものとみなされた日は、「4月4日」となってしまいます。
決議の日付を調整したいときは、「なお、4月5日に決議の効力が発生します。」などというように、決議に期限を設ける方法や、会社の役員等が株主の1人であれば、当該役員が同意書を提出するタイミングを調整するような方法が考えられます。
また、決議の日付はいつでもよく、決議内容の効力発生日を調整する場合は、提案内容に効力発生日を設ける方法も考えられます。(例:令和4年4月1日付で当会社の定款を別紙の通り変更する。など)
みなし株主総会議事録
みなし株主総会の決議が成立したときでも、実際に株主総会を開催した時と同じように、株主総会議事録を作成し、保存しておく必要があります。
みなし株主総会の決議に係る株主総会議事録の記載事項は、次の通りとなります。(会社法施行規則72条4項1号)
1.株主総会の決議があったものとみなされた事項の内容
2.1の事項の提案をした者の氏名又は名称
3.株主総会の決議があったものとみなされた日
4.議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
定時株主総会でも利用できる
みなし株主総会の決議は、臨時株主総会だけでなく、定時株主総会においても利用することができます。
定時株主総会において報告事項がある場合は、会社法320条により、株主全員に当該報告があったものとみなすことができます。
(株主総会への報告の省略)
会社法/e-Gov法令検索 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086
会社法第320条
取締役が株主の全員に対して株主総会に報告すべき事項を通知した場合において、当該事項を株主総会に報告することを要しないことにつき株主の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該事項の株主総会への報告があったものとみなす。
また当該報告があったとみなされた事項も、株主総会議事録に記載する必要があります。
記載事項は、次のとおりです。(会社法施行規則72条4項2号)
1.株主総会への報告があったものとみなされた事項の内容
2.株主総会への報告があったものとみなされた日
3.議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
登記申請の際の添付書類として提出することができる
取締役の就任の登記のように、株主総会議事録を登記申請の添付書類として提出する場合は、みなし株主総会議事録を取締役の選任を証する書面として提出することができます。なお、提案書と同意書は、提出不要です。
また、みなし株主総会議事録を添付書類として申請の際に提出するときも、株主リストの添付は必要となりますのでご注意ください。
今回は、”みなし株主総会”について解説させていただきました。
最近では、また新型コロナウイルスが流行ってきており、株主総会が開けなくて、みなし株主総会の決議で成立させることを検討されている方もいらっしゃるかと思います。
今回の記事で解説させていただいた通り、実際に株主総会を開かなくとも、書面での提案・同意により、株主総会の決議を有効に進めることが可能です。
ご検討されている方は、いつでもお気軽にご連絡ください!
最後までお読みいただきありがとうございました。